旅人

○詩集


億千万の昼を越え 億千万の夜を経て 永き旅路の果つる場所へ

旅人は往く美しき星降りの荒野を 旅人は往く馨しき風渡る草原を
人は問おう 旅人よ この素晴しき地を過ぎて 何故に往くのか
旅人はいらえよう 渇くのだ

旅人は往く雪纏う峻険なる山脈を 旅人は往く地灼けし茫漠たる沙海を
人は問おう 旅人よ この厳しき地を越えて 何故に往くのか
旅人はいらえよう 疼くのだ

旅人は往く繁栄を極めたる大都を 旅人は往く繁華を極めし虚都を
人は問おう 旅人よ この人界の盛衰を後ろに 何処に往くのか
旅人はいらえよう 旅の果てへ

旅人は往く億千万の昼を 旅人は往く億千万の夜を 旅人は往く旅路の果てへ

旅人は独り往く お前のために地は歌い 風は囃し 水は舞おう
旅人は独り往く お前のために月は泣き 星は祈り 日は笑おう

地が果てる されど旅人は往く 時が果てる されど旅人は往く 旅路の果てへ


○詩集

諸権利者.淡海いさな|落成.2006.01.04|定礎.2005.12.29